『ゴジラ』をモチーフにしたスマートフォン向けタイトル『RUN GODZILLA(ラン ゴジラ)』、『GODZILLA DESTRUCTION(ゴジラ デストラクション)』、『GODZILLA BATTLE LINE(ゴジラ バトルライン)』が一挙にリリースされた。
広告--> 広告配信元はTOHO Games(トウホウ ゲームス)。東宝がゲーム事業に注力すべく、この2021年に設立したゲームレーベルだ。大手映画配給会社として知られる東宝は、なぜゲーム事業を立ち上げたのか、東宝 常務執行役員 映像本部 映像事業、デジタル・コンテンツ各担当 兼 チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)の大田圭二氏と、各タイトルのプロデュースを務める、映像本部 映像事業部 映像企画室 企画制作グループ エグゼクティブプロデューサーの塩入大介氏、同プロデューサーの大槻林太郎氏、澁澤匡哉氏にお話を聞いた。

大田圭二氏(おおた けいじ・写真右端)
東宝
常務執行役員
映像本部 映像事業、デジタル・コンテンツ各担当
兼 チーフ・ゴジラ・オフィサー(CGO)
(文中は大田)
塩入大介氏(しおいり だいすけ・写真右からふたりめ)
東宝
映像本部 映像事業部
映像企画室 企画制作グループ
エグゼクティブプロデューサー
(文中は塩入)
大槻林太郎氏(おおた りんたろう・写真右から3人め)
東宝
映像本部 映像事業部
映像企画室 企画制作グループ
ゲームプロデューサー
(文中は大槻)
澁澤匡哉氏(しぶさわ まさや・写真左端)
東宝
映像本部 映像事業部
映像企画室 企画制作グループ
第2企画制作チームリーダー
プロデューサー
(文中は澁澤)
——東宝がゲーム事業を立ち上げたということで、まずはその経緯をお教えください。
大田端緒はアニメ事業だと言えるかもしれません。東宝映像事業部が2012年にTOHO animationというレーベルを立ち上げて、この4月で9年になりました。TOHO animationは、我々がアニメーションという領域で、企画・開発を主体的に展開していこうということで立ち上げたものですが、それがこの9年で徐々に力を付けてきました。
たとえば、新海誠監督とごいっしょさせていただいたり、週刊少年ジャンプ作品である『ハイキュー!!』や『僕のヒーローアカデミア』、最近だと『呪術廻戦』という、いまもっとも勢いのある作品のアニメの製作幹事として関わらせていただいて、IPの価値を高めるための取り組みが少しずつ上手になってきました。
ご存じの通りアニメは360度全方位のビジネスで、我々がそれまであまり得意ではなかったカテゴリー、たとえば音楽制作や2.5次元ミュージカルだったり、イベントまわりや商品化、海外展開などにも東宝グループあげて力を入れてきました。
その中で、唯一欠けていたピースがゲーム事業でした。もちろん、他社様にライセンスを提供してゲームを出してもらってはいたのですが、自分たちが主体的に手掛けてはおりませんでした。ゲーム市場は成長しているので、「何とかしなければ」との認識はあったものの、なかなかきっかけがつかめないという状況でした。
——それがなぜこのタイミングで立ち上げることになったのですか?
大田もうひとつのきっかけが『ゴジラ』です。東宝を代表するIPである『ゴジラ』は、2004年の劇場映画『ゴジラ FINAL WARS』を最後に10年お休みしていました。それが2014年にハリウッド映画として復活して世界的に大ヒットを記録し、2016年には『シン・ゴジラ』が国内で爆発的に支持されて、2019年には『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開、そしていま全世界で『ゴジラvsコング』が大ヒットしています。当社でも『ゴジラ』IPの価値を高めるための『ゴジラ』戦略会議“ゴジコン”を立ち上げ、さらには『ゴジラ』ブランドをコントロールする専門部署の“ゴジラルーム”も作られました。

今年の『ゴジラ』IPと言えばこのタイトル。7月2日から劇場公開される映画『ゴジラvsコング』。42の国と地域でNo.1になった話題作がついに日本上陸。コジラとコング勝つのはどっち?映画『ゴジラvsコング』公式サイト
——それは気合が入っていますね。
大田イベントや商品化も含めて、『ゴジラ』IPを活性化させるための取り組みを国内外問わず展開しています。そこで、これまで手の届かなかったゲーム事業に、我々の持つもっとも強く得意なIPを展開すべきと思い、TOHO Gamesというレーベルを立ち上げて、『ゴジラ』3作品を皮切りに、ゲーム事業を展開していくことにしました。
——ちなみにいつくらいからゲーム事業を始動されたのですか?
大田大きかったのは、“Google Play Indie Games Festival 2019”に参加させてもらったことですね。そのときに、集英社さんやエイベックスさんといっしょに“ゴジラ賞”を提供する形で関わらせていただいて、『ゴジラ』のゲームを作ることに決めました。そこで受賞したのがホカマ・フミシゲさんで、その流れでできたのが、6月3日に配信された『RUN GODZILLA(ラン ゴジラ)』です。
——ゲーム事業に参入したのは、ある程度いけるという手応えがあったからなのですね。
大田もちろん、知見もなく突発的にゲーム事業に参入しても成功できるとは思えなかったので、研究は続けておりました。アニメやゴジラの展開と同じように、ファンの方への届けかたの根幹はいっしょだとの思いもあり、プロデュースワークや宣伝、クオリティーコントロールも含めて力が付いてきたので、“いまだ”との思いはありました。
ただ、誤解しないでいただきたいのですが、私たちはゲーム会社になろうとしているわけではありません。『ゴジラ』やアニメのIPでゲーム展開することを想定しており、オリジナルで何かをするということは基本的には考えていません。ゲームの世界をものすごくリスペクトしていますし、ゲームにおいて私たちの力をいちばん発揮できるのが、私たちの得意なIPのゲーム化ではないかと思っております。
——アニメのIPとおっしゃりましたが、TOHO Gamesでは『ゴジラ』以外のIPのゲーム化も予定しているのですね?
大田まだ発表できる段階ではありませんが、予定しております。
——では、TOHO Gamesというレーベルを立ち上げて、注力しているポイントをお教えください。
大田とにもかくにも、ファンを裏切らないようなクオリティーのゲームをお届けすることです。IPを保持している私たちが、目の肥えたファンの皆さんを裏切るようなことがあってはならないので、責任は重大です。TOHO Gamesでは、とにかくキャラクター・ストーリーを通してゲームの楽しさを伝えていくことを第一に考えております。
お客さんの声を聞くことは大事だと思っています。アニメでもいっしょなのですが、ニーズに合致したイベントを開催したり、声優さんの求められているポイントを打ち出したりするとファンの方に喜んでいただけます。たとえばですが、“このキャラクターはこのポジションに置いたほうがいい”といったことなどもプロデュースしながらやっていきたいです。
——なるほど……ファンの好みを知り尽くしたコンテンツを作るということですね。それでいうと、知り尽くしている自社IPだからこそ、ファンの期待を裏切れないということは言えそうですね。
大田そうですね。そこの難しさはあると思います。ファンの方たちは、とにかくIPに対してある基準を設けていますからね。『ゴジラ』に関して言えば、そういうところをしっかりと監修しているのが“ゴジラルーム”です。フィルムや声、音楽なども含めて、細心の注意を払っています。
——それは『ゴジラ』ゲームに限らず、TOHO Gamesのゲーム作り全般に該当する方針とも言えそうですね。
大田そうですね。私たちは、ファンにIPの魅力を伝えていきます。さらに言えば、それはゲームの魅力でもあります。ゲームのデザインやゲーム性が(IPを)裏切ってはいけないと思うので、そこはきっちり伝えていきたいです。
——IPの魅力を伝えるためには、ゲームとしての魅力も伝えなければならないということですか?
大田そうですね。やはりゲーム自体に新しさと面白さがないと。ただ、『ゴジラ』に関しては、ブランドとしての“お約束と原則”というものがあるので、そこは最低限守りながらも、しっかりと伝えていきたいです。
——そのへんのIPに対するさじ加減は、もしかしていままでIPを展開されて導き出された答えと言えるのですか?
大田そうですね。『ゴジラ』の普遍的なよさと、変えてもいいところをずっと考えたとときに、“守るべきこと”と“壊すべきこと”はこうだというのが核としてあって、“これだけは守ってほしい”ということをきっちりと決めたんです。「これは初代『ゴジラ』から、根底としてあることなので守ろう」というポイントですね。そこさえ守っていただければ、ある程度は改変していただいても結構です、というスタンスですね。
今回のゲームでもその方針は当てはまっていて、ホカマさんの作った『RUN GODZILLA(ラン ゴジラ)』なんて斬新ですよね。『ゴジラ』で“育成&レース”ですよ(笑)。
——そのフレーズを聞くだけでもおもしろそうですね(笑)。
大田みんながゴジラに祈って力を付けていくというおもしろさです。ビジュアルを見ただけでも興味をひきます。
アクションシューティングの『GODZILLA DESTRUCTION(ゴジラ デストラクション)』やリアルタイムストラテジーの『GODZILLA BATTLE LINE(ゴジラ バトルライン)』も、それぞれ魅力があります。それぞれが『ゴジラ』のよさを持ちながらも、違う楽しみかたをしてほしいという思いのもとに作りました。
——今回3タイトルを一気にリリースされたのには、びっくりしました。
大田楽しみかたはたくさんあってもいいのかな……ということで(笑)。3タイトルは、それぞれ明確にゲーム性が異なることが分かるように差別化を図っています。とくに『GODZILLA BATTLE LINE(ゴジラ バトルライン)』は世界中での対戦ゲームとなっており、戦略的な攻防が魅力です。ゴジラ含め怪獣たちの世界観をよく表しており、多くの皆さんに喜んでいただけると思っております。
——TOHO Gamesを立ち上げて、『ゴジラ』のタイトルを作ろうとなったときに、アイデアが溢れた印象ですね(笑)。
大田そうですね(笑)。“Google Play Indie Games Festival 2019”で“ゴジラ賞”を受賞したホカマさんに作っていただくタイトルはマストとしてあって、ほかにもいくつかアイデアが持ち上がって、1本に限る必要はないのではないかと考えました。『ゴジラ』の映画も、ハリウッドだったら3年に1本とかのペースですし、毎日短い時間でも『ゴジラ』を感じてほしいので、テーマは“毎日ゴジラ”です(笑)。
——ところで、TOHO Gamesではスマホ以外での展開は予定していますか?
大田いまはスマホ中心ですが、ゆくゆくは家庭用ゲーム機向けソフトにも取り組んでいきたいと考えております。そもそもスマホも簡単にできるとは思っていないのですが、家庭用ゲーム機向けはまた違うステージだと認識しています。いずれ経験値を貯めていったときに、マルチプラットフォームが当たり前となる時代に家庭用ゲーム機向けも可能なのではないかと、ステップのひとつとして据えておきたいです。
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